はじめに(免責事項)
この記事では、「認知のゆがみ」に気付くために、AIチャットサービスのChatGPTを活用した筆者の実験について紹介します。
ただし、この実験や方法を他の人に勧めるものではありません。状況は個々で異なるため、それぞれが自身の判断で行動する必要があります。
筆者は認知療法や精神医学の専門家ではなく、この記事はあくまで個人の体験記・日記としてお読みいただければ幸いです。何か疑問や不安がある場合は、専門家の助言を求めることをお勧めします。
なお、参考文献については、記事の終盤に記載しています。
「認知のゆがみ」をChatGPTに指摘させる方法
準備するもの
Web版のChatGPTを使用しました。ChatGPTはWebブラウザで利用でき、メールアドレスを登録することで無料で使用することができます。
ChatGPTは、パソコンやスマートフォンなど、さまざまなデバイスで利用できます。
サービスを利用する際には、ChatGPTの利用規約やプライバシーポリシーをご確認ください。
ChatGPTに入力する命令(プロンプト)の形式
要望: 認知療法の観点から、私の認知の歪みを指摘してほしい。
目的: 私の置かれた「状況」と「気分」、その瞬間に浮かんでいた考え=「自動思考」を、現実的でバランスの良い考え方に変えていくヒントを得たい。
状況: (具体的な状況を入力)
気分: (その時の気分や感情を単語で入力)
自動思考: (その時に浮かんでいた自分の考えやイメージを入力)
実践例
入力した命令(プロンプト)
要望: 認知療法の観点から、私の認知の歪みを指摘してほしい。
目的: 私の置かれた「状況」と「気分」、その瞬間に浮かんでいた考え=「自動思考」を、現実的でバランスの良い考え方に変えていくヒントを得たい。
状況: 大勢の人がいるイベント会場に行き、参加者の応援をしようとしたが、疲れと不安感が高まり、途中で帰宅してしまった。
気分: 憂うつ、不安
自動思考: 参加者には普段から努力するよう促していたのに、自分のほうが頑張れなくて申し訳ない。最後まで応援できなかったと知られたらがっかりされそうだ。体力が足りていなくて情けない。あの場には人が大勢いたが、自分が特に駄目な人間であるように感じる。
ChatGPTからの応答(生成されたテキストのコピー)
認知療法の観点から、あなたの自動思考を見直し、バランスの取れた現実的な考え方に変えるためのアドバイスを提供します。
自動思考の歪みと修正方法
- 全か無か思考(白黒思考)
- 自動思考:「自分のほうが頑張れなくて申し訳ない」「体力が足りていなくて情けない」
- 修正方法:人は完璧ではありません。あなたは応援に行くために努力しましたが、体調を優先したのは賢明な判断です。自己評価を全ての状況で100%達成することを期待するのではなく、努力と意図を認めましょう。
- 一般化のしすぎ
- 自動思考:「自分が特に駄目な人間であるように感じる」
- 修正方法:一度の出来事で自分全体を評価するのは不公平です。大勢の人の中で、一人の行動を全体として捉えるのではなく、その日の具体的な状況や感情に注目し、その中での一つの選択を評価しましょう。
- 心のフィルター
- 自動思考:「最後まで応援できなかったと知られたらがっかりされそうだ」
- 修正方法:ネガティブな部分だけに焦点を当てずに、全体像を見ましょう。あなたが応援に行くこと自体が既に重要なサポートです。途中で帰った理由を理解してくれる人もいるはずです。
- 自己関連付け
- 自動思考:「自分のほうが頑張れなくて申し訳ない」
- 修正方法:他人の反応や期待に過度に結び付けず、自分の限界や状況を理解することが大切です。あなたの健康や気持ちを優先することは、自己管理の一環です。
新しいバランスの取れた考え方
- 努力を認める:「私は応援に行くために最善を尽くした。体調が悪化する前に帰る決断をしたことは、自分を大切にするための正しい選択だった。」
- 他者の理解を信じる:「全ての人が私が最後までいられなかった理由を理解するとは限らないが、私が最善を尽くしたことは事実だ。」
- 状況を再評価する:「たとえ途中で帰ったとしても、私のサポートは価値がある。これからもできる範囲で他の方法でサポートを続けられる。」
次にできること
- 自己ケアを優先:体調が悪化した場合は、休むことが重要です。自己管理を怠らず、無理をしないこと。
- ポジティブな自己対話:ネガティブな自動思考に対して、現実的でポジティブな視点を持つことを意識しましょう。
- 他者とのコミュニケーション:自分の気持ちや状況を正直に伝え、理解を求めることも大切です。
認知療法の基本的なアプローチは、自分の考え方を見直し、より現実的でバランスの取れた視点を持つことです。焦らずに少しずつ取り組んでいきましょう。
[PR]実践してみて感じたこと
メリット
自分以外の視点を得ることができる
認知療法では、自分の考え方の問題点に気付いたり、自分の弱さと向き合ったりすることが必要です。
しかし、実際にやってみると、自動思考のゆがみを自分で見つけることは非常に難しく感じられることが多いです。さらに、自分と向き合うこと自体がストレスになることもあります。
このようなとき、ChatGPTは自分以外の視点を提供してくれます。
ただし、ChatGPTはあくまで補助的なツールであり、専門家の代わりにはなりません。利用する際にはその点を理解しておくことが大切です。
いつでも何度でも指摘を求めることができる
本来、自分自身で認知のゆがみに気づくのが難しい場合は、医師やカウンセラーといった専門家のサポートを受けるのが最も効果的です。
専門家との対話は、時間が限られているとしても非常に有益であり、質の高いサポートを提供してくれます。しかし、専門家と話せる機会は限られており、緊張によって自分の困りごとをうまく伝えられないケースもあるでしょう。
また、専門家ではなくとも信頼できる人に相談することも勧められることもあります。
信頼できる人がいない場合や、心境を細かに話すことに抵抗がある場合には、AIツールが役立つことがあります。
ChatGPTのようなAIツールを使うことで、自分の望んだタイミングで何度でも指摘を求めることができます。思うように意図を伝えられなかったと感じたら、プロンプトを入力し直すことも簡単です。
例えば、ChatGPTとのやり取りを通じて思考のパターンを記録し、次回のセッションでカウンセラー等と共有することで、より深い理解と効果的な治療が可能になるかもしれません。専門家との対話の補完としてChatGPTを活用し、認知療法の効果を引き出す手助けにしましょう。
デメリット
自分自身で考える部分が少ない
認知療法の一つの重要な要素は、自身が自分の考え方のパターンに気づき、それを変えるための努力をすることです。
しかし、ChatGPTを使うことで、問題解決の過程で自分自身で考える部分が少なくなる可能性があります。AIが提供する答えやアドバイスに依存しすぎると、自分で問題を解決する能力を養う機会を失ってしまうかもしれません。
認知療法は自己認識と自己改善を促すプロセスであるため、この依存は治療の効果を減少させるリスクがあります。
ChatGPTが不適切な応答をする可能性がある
ChatGPTは高度なAIであるものの、時には不適切な応答をする可能性があります。
特に認知療法のようなデリケートな分野では、誤った情報や適切でないアドバイスが状態を悪化させるリスクがあります。
AIの応答に頼りすぎることなく、あくまで補助的に利用することが重要です。また、AIの限界を理解し、その限界を超える問題については専門家に相談することが推奨されます。
今後について
プロンプトを改善していきたい
今回のプロンプトは、『こころが晴れるノート』(詳細は下部の「おわりに」に記載)の自動思考をチェックする方法を元に、本記事の筆者が作成したものです。
より効果的な方法がないか、新しいアイデアやプロンプトを試しながら、より実践的で役立つツールにしていきたいと思います。
自分自身で問題を解決する能力を養っていきたい
認知療法の基本的な原則として、自分自身の力で問題を解決する能力を養うことが重要だと考えます。
AIの提案に頼り過ぎず、常に自分の考えを振り返り、批判的に見つめる意識を持ちたいです。また、このプロセスにおいては、試行錯誤や失敗も成長の一部であると考えるのが良いでしょう。
AIを使った方法は、その補助として活用し、自己効力感を高めながら、認知のゆがみを修正する力を養っていきたいです。
おわりに
冒頭の繰り返しになりますが、本記事はChatGPTに「認知のゆがみ」を指摘してさせてみようという個人的な実験の記録であり、この方法を人に勧めるものではありません。
認知療法の実践を学ぶ際、最も参考にしたのは大野裕『こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳』(2003年、創元社)という書籍です。
ChatGPTに入力するプロンプトの形式を考える際にも参照しました。ただし、本記事の筆者が書籍の内容を正しく理解・解釈できていない可能性もあります。
特に精神疾患のある方や、その疑いのある方は、ぜひ医師や専門知識を持ったカウンセラー等にサポートを求めてください。このような個人のブログやAIの回答に頼りすぎないよう、心よりお願い申し上げます。
『こころが晴れるノート』の冒頭には、「何か困難にぶつかったときに、それに向き合い乗り越えていけるような心の力を育てる方法」と書かれています。そのような心の力を養うために、適切なサポートを受けながら、自己探求と成長を続けていきたいものです。
[PR]余談
認知療法という医療に関わる内容についての記事を書くにあたっては、正確性に対する不安がありました。
そこで本記事を執筆する際、一度自分で文章を書いた後、ChatGPTに「認知療法の観点から問題があったら指摘してほしい」とプロンプトを送ってみました。その結果、多くの指摘を受け、修正を加えた上でこの記事を完成させました。
ただし、この点に関しても、ChatGPTの指摘が全て適切であるとは限りません。何度も繰り返しているとおり、AIのアドバイスは参考になりますが、必ずしも完璧ではありません。
最終的な内容の責任は筆者にあります。本記事が誰かにとって有益であることを願っています。誰かというのはもちろん、自分自身も含めて。